2019年08月12日

2019年08月13日

うつ病のときはどんな薬を飲めばいいの?抗うつ薬の種類と特徴【薬剤師コラム】

心の病気の治療には、抗うつ薬がよく処方されています。
抗うつ薬といわれると怖くて危ない得体がしれないものというイメージを持たれている方もいます。
昔の抗うつ薬は確かに副作用もたくさんあり、イメージ通りのお薬もありました。
しかし、現在の抗うつ薬は様々な種類のものが販売・開発されており、適切に使用すれば副作用も起こすことなく、安全に治療することができるものが多くあります。
今回は、そんな現在の医療の最前線で使用されている抗うつ薬について解説をし、どんな抗うつ薬を服用すればいいかを紹介していきます。
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そもそも抗うつ薬とはどんな薬?

そもそも抗うつ薬とはどんな薬?
抗うつ薬の役割は、脳内環境の調整です。
病的な気持ちの落ち込みの直接的原因は、バランスを崩してしまった脳内環境にあります。脳内環境を元の状態に戻すために使用されるのが抗うつ薬です。
抗うつ薬のうつ病に対する作用機序は、抗うつ薬が作用して脳内にあるモノアミンという神経伝達物質(神経にある細胞間を情報を伝達させる物質)を増やすことでうつ症状を改善しているのだと考えられています。
うつ病の場合、患者の脳内のモノアミンが減少している現象が多くみられ、抗うつ薬を服用して脳内のモノアミン量のバランスを整えることで、うつ病の諸症状が改善されます。
うつ病と関係すると考えられているモノアミンとそのモノアミンが関係している精神症状はセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの3つです。
セロトニンが減少することで気分が落ちこみ不安感が増します。
ノルアドレナリンが減少することでやる気や気力が減少します。
ドーパミンが減少することで物事に対する興味が失われたり、楽しいと感じることが少なったりするといわれています。

抗うつ薬の効果が現れるまで・基本的な服用期間

そもそも抗うつ薬とはどんな薬?
抗うつ効果が現れるまでには時聞が必要であり、個人差はありますが、大体、1~2週間ぐらいかかります。
また、うつ症状が消えたからといって抗うつ薬の服用を止めると、脳内環境がまだ自力では整えられない状態のため、再発するリスクが高まります。
抗うつ薬は再発防止のためにもしばらく飲み続ける必要があるので、うつ病の症状が初めて出た時は、大体、半年ぐらいを目安として服用するようにします。
うつ病の症状が何回か再発してしまった人の場合は、より長期間の服用が必要となります。

抗うつ薬にはどのようなものがある?

そもそも抗うつ薬とはどんな薬?
抗うつ薬は、うつ病の原因と考えられている脳内の神経伝達系(セロトニン、ノルアドレナリン)に作用します。その化学構造、作用機序によって、三環系、四環系、SSRI、SNRI、NaSSA、その他と呼ばれる6つのグループに分類されています。

開発された年代順に、古いものから「三環系→四環系→SSRI→SNRI→NaSSA」となります。新しく開発された薬ほど、脳内のターゲットにより選択的に作用するので、治療効果が高く、副作用が少なくなるといわれています。

しかし、必ずしも新しければ新しい抗うつ薬ほど良いというわけでもありません。古くからある三環系、四環系に属している薬は新しい薬と比較して薬の値段が安く、経済的な負担が少なくて済みます。また、肝心の個人個人によって薬との相性が異なるので、人によっては新しい薬よりも古くからある抗うつ薬の方が良く効くという場合もあります。

6つのグループには以下のようなお薬があります。

<SSRI>
パキシルジェイゾロフトレクサプロ、デプロメール、ルボックス
<SNRI>
サインバルタ、イフェクサー、トレドミン
<NaSSA>
リフレックス、レメロン
<三環系抗うつ薬>
アモキサン、ノリトレン、トリプタノール、トフラニール、アナフラニール
<四環系抗うつ薬>
ルジオミール、テトラミド
<その他>
デジレル、レスリンなど

現在のうつ病治療のスタンダードは、副作用の発生が比較的少ないと報告されているSSRIやSNRI、NaSSAがよく処方されています。しかし、古くからある三環系抗うつ薬なども優れた効果を発揮することもあるので、患者さんの症状にあわせて使い分けがされています。

抗うつ薬にはどんな副作用がある?

抗うつ薬の種類によって、さまざまな副作用があります。
一般的な抗うつ薬の副作用は、服用を開始して最初の1~2週間に強く出ることが多く、それ以降は体が慣れてきて副作用の症状は治ることがほとんどです。
また、抗うつ薬の効果が現れるまでに日数がかかることもあり、初めのうちは副作用だけが感じられることもあります。
主な副作用として、SSRIでは吐き気、食欲不振、下痢、SNRIでは吐き気、尿が出にくい、頭痛、NaSSAでは眠気、体重増加などがあります。
三環系では口が渇く、便秘、立ちくらみ、四環系では眠気・ふらつきなどが報告されています。
「薬をのんだらかえって具合が悪くなった」とうつ病治療を自己判断で中断せず、副作用がつらい場合は医師に相談するようにしましょう。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

<SSRIの医薬品>
パキシルジェイゾロフトレクサプロ、デプロメール、ルボックスおよびこれらのジェネリック医薬品
SSRIはSelective Serotonin Reuptake Inhibitorsの略称であり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬といわれています。現在の医療におけるうつ病の第一選択薬となっています。
服用することで脳内のセロトニンだけを増やすように開発された抗うつ薬です。
旧来の三環系抗うつ薬は副作用があり、医者または患者さんによっては敬遠されていたことから、副作用を少なく・より選択的に作用することを目的として開発されました。肝毒性、心・血管副作用や、鎮静作用、口の渇き・便秘などの副作用は減少しましたが、セロトニン症候群、賦活症候群、SSRI離脱症候群(中断症候群)など旧来の抗うつ剤ではあまり報告されていなかった副作用が発生しています。
脳内のセロトニン不足に関係する不安や落ち込みには優れた治療効果を発揮しますが、意欲や気力に関係するノルアドレナリンにはほとんど効果をあらわさず、そちらのうつ病症状を改善する効果は低くなっています。

SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

<SNRI>
サインバルタ、イフェクサー、トレドミンおよびこれらのジェネリック医薬品
SNRIはSerotonin Norepinephrine Reuptake Inhibitorsの略であり、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬といわれています。
SSRIと同じように副作用も少なく、現在のうつ病治療の現場では広く用いられている比較的新しいタイプの抗うつ薬です。
SSRIがセロトニンのみの再吸収を阻害するのに対して、SNRIではノルアドレナリンの再吸収もを阻害する作用もあるので、これによって興奮神経を刺激します。そのため、興奮に起因した不眠症のような副作用も生じやすいのが欠点です。
ノルアドレナリンには体の痛みを緩和する効果もあるため、糖尿病性神経障害や慢性翼通称、変形性関節症などの慢性的な痛みがある方の痛み止めとしても使われます。

NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬)

<NaSSA>
リフレックス、レメロン
NaSSAはNoradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantmの略であり、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬といわれています。
NaSSAはこれまでの抗うつ薬の中でも1番効果が強いといわれています。
これまでのように神経伝達物質(モノアミン)の再取り込みを阻害して濃度を上げるのではなく、セロトニン、ノルアドレナリンの分泌量そのものを増やす作用があります。
SSRI、SNRIと作用用途が違うため単剤処方で効果が薄いうつ病に対してはこれらの抗うつ薬を併用するカリフォルニア・ロケットという投薬が行われる場合があります。

三環系抗うつ薬

<三環系抗うつ薬>
アモキサン、ノリトレン、トリプタノール、トフラニール、アナフラニール
もっとも古い抗うつ薬で1950年代に登場しました。これらの薬のセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みの阻害が後に発見され、後の改良につながっていきました。
初期の抗うつ薬でありますが現在でも使われ続けているお薬です。その理由として、有効性という点では新しいタイプの抗うつ薬が必ずしも優っているとは言えず、多くの副作用が報告されているとはいえ、緊急入院するような重症の患者の場合では三環系抗うつ薬の有効性が高い可能性があるという見解があるためです。
特徴としては鎮静作用が強く、立ち上がったときに低血圧(起立性低血圧)を起こしやすいです。

四環系抗うつ薬

<四環系抗うつ薬>
ルジオミール、テトラミド
三環系抗うつ薬で起こる副作用の発生を減らすために開発されたものであり、三環系抗うつ薬と比較すると抗うつ作用が弱めになっています。
ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害し、セロトニンの再取り込みは阻害しません。
三環系抗うつ薬やSSRI、SNRIと比べると早く効果があらわれ、飲み始めてから4日程度で効果があらわれます。三環系抗うつ薬と同じように、副作用(排尿困難など)を伴う場合もありますが、三環系抗うつ薬に比べて軽いことが特徴とされます。

その他

<その他>
レスリン、デジレルなど
レスリン、デジレルは脳内の神経伝達物質であるセロトニンの量を増やすことにより、うつ病、うつ状態の改善に効果があります。眠気の副作用がよく報告されています。強迫性障害にも用いられる。
三環系、四環系抗うつ薬には属さず、新しいタイプの抗うつ薬として、SSRI、SNRI、NaSSAの登場まではよく使われていました。

まとめ

そもそも抗うつ薬とはどんな薬?
以上の抗うつ薬のなかから、実際にどの抗うつ薬が自分にあうものかは、個人個人の症状に応じて異なります。
共通して言えるのは、うつ病が完全に治らない大きな原因の1つとして、「もう薬を飲む必要がない」と自己判断で服薬を中止してしまうことがあります。
自分で治ったと思った時点では、脳内の神経伝達物質のバランスはまだ不安定なことが多いので、自己判断をせずに医師に相談するようにしてください。

原稿作成:薬剤師 白鳥勇磨

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