2019年08月08日

2019年08月13日

性病ってかかったらもう治らない?予防はどうすればいいの?【薬剤師コラム】

性病に感染したら完全に治すことはできないのでしょうか?
ほとんどの種類の性病は治すことができますが、残念ながら現在の医学でもすべての性病を完全に治すことはできません。
クラミジアや淋菌などは適切な抗生物質を使用すれば治すことができます。
ヘルペスや尖圭コンジローマなどは見た目上はよくなっても、体内に潜伏しているウイルスを完全に殺すことができず、体調不良や免疫力低下によって再発してしまうことがあります。
また、HIV(エイズウイルス)に感染した場合も、現在でも特効薬は開発されておらず、発症を抑える薬があるにとどまり、発症してしまえば最終的には死に至ることも少なくありません。
しかし、どんなSTDでも、早期に発見して早期に適切な治療をすれば完治あるいは症状の進行を抑え、寿命を全うすることができます。
そのため、今回はそんなSTDの有無を確認する方法やそれぞれのSTDで推奨されている治療方法について紹介していきます。
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そもそも性病(STD)とは?



性病とは、性行為をすることによって起こる感染症Sexually Transmitted Diseases:STDのことを指します。
膣とペニスとの性交、ペニスと肛門での性交、ペニスと口による性行為によって感染する疾患の総称です。
STDの感染源は体液(精液、膣分泌液、血液など)のなかに含まれており、性行為をすることでヒトの粘膜(陰茎、膣、肛門、尿路)を介して感染します。
その反面、性行為以外の日常生活においては通常感染することはありません。
また、必ずヒトを介して「感染する」病気であり、自然に発生してくることはありません。
近年は性行為の低年齢化に伴い、中高生などの弱年齢層の間でもSTD感染が広がりつつあります。
高齢化社会においても性行為を前向きに楽しめるようになっており、中高年になってからのSTDの感染が増加傾向にあります。
STDの怖いところは、STDになっても初期の段階では自覚症状がない場合や症状が軽くて気がつかないことです。
いくら自覚症状がないといってもSTDの症状は静かに体内で進行しています。
知らず知らずのうちにパートナーにSTDを感染させる可能性もあり、感染がどんどん広がってしまうことが大きな問題です。
また、自覚症状があっても恥ずかしくて医療機関を受診しにくいという理由により、早期の治療や正しい治療ができないこともあります。

STDの病原体



STDは他の人と性行為をすることで病原体に感染することで発症します。
STDの原因となる病原体にはいくつかの種類があり、細菌、真菌、ウイルスなどのどれに感染するかによって発症する病気が異なります。
以下がそれぞれの病原体に感染することで発症するSTDです。

<細菌>
梅毒 Treponema pallidum
クラミジア Chlamydia trachomatis
淋病 淋菌:Neisseria gonorrhoeae
軟性下疳 Haemophilus ducreyi

<真菌>
カンジダ症 Candida albicans

<ウイルス>
肝炎 肝炎ウイルス
AIDS(後天性免疫不全症候群) HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
ヘルペス ヘルペスウイルス
尖圭コンジローマ ヒトパピローマウイルス

<寄生虫>
ケジラミ Pthirus pubis
疥癬 ヒゼンダニ

<原虫>
トリコモナス症 Trichomonas vaginalis

まずはSTDに感染しないように予防



STDは性行為によって感染してしまうので、性行為をしなければまず感染することはありません。
しかし、性行為をするとしても適切な予防方法をすれば限りなくSTDの感染を予防することが可能になります。
性行為をするときの適切なSTD予防法は以下の通りです。

<性行為のパートナーを限定する>
複数のパートナーとの性行為は、それだけSTDに感染する機会を増やしてしまいます。
性行為をするパートナーを固定することは感染予防のために大切なことです。
性行為をするパートナーを恋人や配偶者などに限定しましょう。
ただし、「現在のセックスパートナーがお互いのみであること」と、「STDの検査を受けて、お互いが感染していないことを確認していること」が前提条件となります。

<より安全な性行為をする>
性行為をする際にできるだけ粘膜や体液の接触を避けることでSTDの感染を予防することができます。
具体的にはコンドームの着用です。
コンドームを着用することで精液や膣分泌液が口や性器の粘膜に接触することを防ぎます。
STDは喉にも感染することがあるので、オーラルでの性行為中もコンドームを着用することが推奨されています。

STDに感染したかな?と思ったらまずは検査をする



STDに感染してしまった場合、早めの治療をすることで症状を軽めに抑えることが可能です。
そのためSTDに感染するかもしれないような不安な性行為をしてしまった場合には安心できるためにも早めに検査をして確認するのがおすすめです。
STDの検査方法は主に2種類あり、医療機関を受診して血液を採取して検査する方法と、検査キット(HIV・エイズ検査キット、B型肝炎検査キット、C型肝炎検査キットなど)を購入し自宅で検査する方法があります。
それぞれの特徴として、医療機関を受診して検査すると料金が高く時間もかかるが正確な検査を受けることができ、自宅で検査すると料金が安く速攻で検査結果を得ることができますが医療機関ほどの精度はありません。そのため、まずは自宅で検査をして怪しい結果が出た場合に医療機関を受診する方が多いです。

主なSTDの種類と症状および治療薬



<性器ヘルペス>
性器や口、口腔周囲、肛門などからヘルペスウイルスが感染します。2~10日の潜伏期を経てから発症します。
主な症状として、性器の痒み、不快感ののち水泡、びらんがあらわれます。
かなりの痛みを伴うのでまずありえませんが、症状をそのまま放置しても2~4週間で自然に治ります。ただし、その後再発を繰り返すことが多いです。
治療薬には抗ウイルス薬が用いられています。飲み薬としてバルトレックスやそのジェネリック医薬品、ゾビラックスなどが使用されています。
塗り薬にはアシビルクリームゾビラックスクリームなどが用いられています。

<尖圭コンジローマ>
尖圭コンジローマはウイルスによって感染し、ウイルスは皮膚のイボの中に多く存在しています。性行為の際にそのイボに皮膚や粘膜の微小な傷が接触することで感染します。
感染すると3週間~8ヵ月程潜伏し、その後性器や肛門周囲などに鶏の冠のような腫瘤ができます。
症状を放置すると、20~30%の方は3ヵ月程度で自然に治癒しますが、場合によってはより悪化することもあります。
治療には、ベセルナクリーム、イミクアッドアルダラなどが用いられています。

<淋菌>
淋菌はその名前の通り病原菌である淋菌に感染することで発症します。
淋菌の感染力は非常に強く、菌は喉や直腸、尿にも存在するため口や肛門、尿を使った性行為も危険です。菌が含まれている膿や分泌物のついた手で目をこすることで結膜炎になることもあります。
2~7日間の潜伏期間を経て淋菌を発症します。
症状は、男性では排尿時痛と膿尿、女性ではおりものの増加や不正出血が起こります。
初期の段階では自覚症状がわかりにくく気づきにくいです。
症状を放置すると不妊の原因となります。
母親が感染した状態で出産すると、新生児が淋菌性結膜炎になることがあります。
治療薬として主に抗生物質が用いられており、アジスロマイシン系(ジスロマックアジー)などが多く使用されています。

<クラミジア>
クラミジアは菌によって感染します。
菌は喉や直腸、尿からも出てくるため、口や肛門を用いた性行為をすると危険です。
1~3週間の潜伏期間を経て発症し、男性では排尿時痛や尿道のかゆみの症状があらわれますが、女性では症状が軽く無症状のことも多いです。しかし、そのまま放置すると不妊、流産・死産の原因となることもあります。
治療薬として、抗生物質のアジスロマイシン(アジーなど)やニューキノロン系、テトラサイクリン系のものが多く使用されています。

<梅毒>
菌を有している感染者との粘膜や皮膚を接触する性交をすることで感染します。
3週間程度の潜伏期間を経て発症し、初期では感染部位(性器、口、肛門、手指など)に痛みのない下疳と呼ばれるびらんができます。感染後数ヵ月で手のひら、足の裏、体全体に赤い発疹が出ることがあります。小さなバラの花に似ていることから「バラ疹」ともよばれています。この時期に適切な治療を受けないと、数年後に複数の臓器の障害につながることがあります。
感染後数年間症状を放置すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)ができます。また、心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死に至ることもあります。
治療薬としてペニシリン系の抗生物質が用いられることが多いです。

<B型肝炎>
B型肝炎はウイルスによって感染します。
血液や精液、膣分泌液にウイルスは多く含まれており、粘膜や傷口が接触することで感染します。主な感染経路は性行為ですが、出産による母子感染や注射針の回し打ちなどの血液を介することでも感染します。
3ヵ月ほどの潜伏期間を経て発症し、発熱や全身倦怠の後、黄疸(1~2%で劇症肝炎)を起こします。患者によっては無症状の場合もあります。
そのまま放置すると慢性肝炎、肝硬変、さらに肝癌へと進展することがあります。
治療薬として抗ウイルス薬が用いられます。エンテカビル(へパロ)ラミブジン(ラミビル)などが使用されています。

<HIV感染症/エイズ>
最大にして最恐のSTD、エイズです。
エイズはHIVに感染することで発症します。HIVは血液や精液、膣分泌液に多く含まれており、粘膜や傷口がそれらに接触することで感染します。
主な感染経路は性行為によるものですが、出産による母子感染や注射針の回し打ちになどの血液を介することでも感染します。
潜伏期間は感染者によってばらつきがありますが、平均10年ほどウイルスが潜伏してから発症します。
感染後はしばらく無症状期間が続きますが、一度発症してしまうと、免疫不全が進行し、種々の日和見感染症や悪性リンパ腫などを発症します。症状は徐々に進行しやがて死に至ります。
治療薬としては、現在でも完治することは難しく発症を抑制するにとどまっています。基本的に抗ウイルス薬を服用することになり一生継続する必要があります。ツルバダ配合錠テンビルデュオビルなどが服用されています。

まとめ~気になったらまずはすぐに検査をしましょう~



STDは早めの治療が肝心です。早めにSTDの感染に気付ければ手遅れになる前にSTDを完治させる、あるいは寿命までSTDを発症することなく抑制することができます。
もしもこの記事を読んだ方で、少しでもSTDに感染した心当たりがある方や適切な感染予防ができない性行為をしてしまった方は、速やかなSTD検査を受けて感染していないかどうかを確認するようにしてください。

原稿作成:薬剤師 白鳥勇磨

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